ルポ「地方政治家」

地方政治家 (1983年) (ルポルタージュ叢書〈31〉)

地方政治家 (1983年) (ルポルタージュ叢書〈31〉)

収賄事件の執行猶予中に町長に返り咲いた者、市民の冠婚葬祭に全て出席する市長、10期も町長を務めた女性首長、8期連続無投票当選した町長(森喜朗の父親)、5000人もの後援会会員を旅行に連れて行く県議、大学在学中に選挙に出てTシャツにGパンで議会に出席する市議などなど。個性的な地方政治家(首長、地方議会議員)の姿を描いたルポタージュである。出版が1983年とかなり古いので、地方政治家の「今」を知るには、相応しくないかもしれないが、読み物としては大変おもしろかった。

森パパの「(自民)党員であることの誇りはない。(中略)しかし、しがない町長としては、自民党に土下座して頼まねばならないことがいっぱいある。やむ得ざる自民党員なんです*1」という発言には、威勢を誇ったかの党の地方への底堅さを思い起こさせる。
10期務めた松野友町長の8選目、県で唯一の反知事派だったために、県政界をバックに助役が突如立候補した。松野氏は、この助役に後事を託そうとも思っていたが、裏切りを感じ「意地で立候補」し当選したという。県というか知事の介入ってのは、恐ろしいと感じた。

地方政治や地方政治家の動向は何か事件を起こさない限り全国紙には取り上げられないし、地域版や地方紙でも議会活動などの日々の活動を取り上げた記事は少ない。しかし、我々の選んだ政治家は何も国会議員に限られず、名前も知らない地元自治体の議員たちや首長も、住民を代表する政治家なのである。
当選最低得票が少ないという意味で住民にとって一番身近な政治家は市町村議会議員であるが、政令指定都市の市議と人口数千人の村の議員さんでは、その近さも党派性も有権者が求める機能も、かなり違うと思うが、その差が政策のアウトプットにどう影響するのかが気になった(首長も同じだが)。

ちなみに、Tシャツで議会に出ていた市議は、立派なスーツを着て市長としてHPに載っていました。

*1:p199