陸軍の異端児への評論本

 

石原莞爾 その虚飾 (講談社文庫)

石原莞爾 その虚飾 (講談社文庫)

 石原莞爾(いしわらかんじ)といえば、彼を描いた小説も多数あり、割と有名な軍人である。幼年学校時代に写生課題で自分の(男の)宝物を描いたり(作り話であった気もするのだが)、東条英機を東條上等兵と呼んだりとエピソードの多いお方です。
 この本は石原を批判的に30章に渡って論じている。著者は石原憎しの感情が強く、結論ありきで何でもいいから石原を悪く描こうという意図が感じられた。それに、断片的な記述が多く、はじめて石原本を読むという人にはおススメできない。

 
 226事件での「反乱軍」早期鎮圧の主張やシナ事変の不拡大方針など、満州事変の張本人として相応しくない(と、とられかねない)行動をしたり、「最終戦争論」のような思想を持っていたという面で、興味深い人物である。ちなみに、「最終戦争論」は青空文庫で読めるみたい。

 もっと重厚な石原論を読んで見たい。


以下雑考。
 極端な先入観を持って、人物を描く危険性。確かに、ある程度イメージがないと、その人物を知ることは難しいと思う。しかし、そのイメージが規範化しているならば、これほど危険な方法はない。あらゆる資料を渉猟しても、規範の呪縛からは逃れられず、結局都合の良い部分しか見えなくなってしまうからだ。
 だから、読み手は著者の呪縛を確かめ、それを解こうという態度で、論を追うべきだと私は思う。