「政治をみる眼 24の経験則」という新書

この本は、日経新聞政治部長で日本政治学会と日本選挙学会に所属している著者がジャーナリズムとアカデミズムの架け橋を目指して書いたものである。実証研究などで得られた政治学の知見を活かしながら、実際の日本政治から「経験則」を24個提示している。
政治報道と「沈黙の螺旋仮説」の説明が特におもしろかった*1沈黙の螺旋仮説というのは、ノイマンが示した仮設だが、大雑把にいうなら、自分の意見が多数派に属すると思うならどんどんその意見を開陳するが、逆に少数派だと思えば意見表明を差し控えて沈黙するというものだ。安倍政権が誕生した時*2に世論は高い支持率を示し、メディアも好意的に報じた。が、郵政造反組復党問題、閣僚の不始末などで支持率は低下した。この安倍政権への「風向き」の変化に乗じてメディアはそれまで正の側面として報道されていた安倍氏の「清新さ」を負の「未熟さ」として報じるなど、マイナス報道を繰り返したというのだ。
メディアの性質上、長いものに巻かれてしまうのは仕方なしと思う。でも、私のような天の邪鬼な人間は、マイナス報道があるほど何かいいところもあるに違いないとプラス評価できるところを探そうとするし、逆に好意的な報道ばかりが目立てば*3怪しいところもあるにちがいないと穿った見方をしてしまう。だから、メディアの波にはなかなか乗れないのだ。まあ、乗れてもあまりいいことはないと思うが・・。郵政選挙の時の過熱報道(小泉さんにプラスの)をメディアの皆様方は反省しているみたいだが、今の麻生政権の報道があまりにもネガティブな面に集中している気がする。「羹に懲りて膾を吹く」式の反省では余計厄介なのだが。

豆知識。「55年体制」という戦後日本政治のキーワードは64年6月号の「世界」で升味準之輔が使って広まったらしい*4

*1:1章

*2:06年9月。

*3:某府知事とか

*4:p199