「気骨の判決ー東条英機と闘った裁判官」という新書
- 作者: 清永聡
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/01
- メディア: 新書
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5件の訴訟が提起され、そのうちの一つである鹿児島2区の審理を担当したのが、吉田久が裁判長を務める第3民事部であった。吉田らは現地に行くなどして丁寧な審理を行なって、選挙無効判決をにおわせた。しかし、司法内外からの圧力が強まる中、他の翼賛選挙無効訴訟で原告敗訴の判決が出された。いずれも吉田久の思いに反する動きであり、判決当日「もう、帰ってこられないかもしれない*2」と漏らしていたらしい。
吉田久は「選挙ハ之ヲ無効トス」という2万字の判決を下し、「気骨」を示した。
ある潮流が時代を支配する時、その流れに掉さすのは容易いが、自らの信ずるところを維持し「change」しない事は難しい。吉田久は戦前日本に存在した時局に囚われなかった裁判官ということであろう。もちろん本人は法律に従っただけで、むやみな正義感を求められるのは心外かもしれない。だが、吉田久が示した気骨にある種の快さを感じた。