昭和史(1926-45)についての本

 戦前の昭和史を書いた本としては、半藤さんの「昭和史1926−1945」が有名だが、今回は経済学者が書いた「昭和史」を読んだ。

昭和史〈1(1926‐45)〉

昭和史〈1(1926‐45)〉

 政治、経済、文化など幅広く書いており、しかも著者の感想はあまり記述がない。その意味では、教科書のようなものといえるだろう。しかし、索引がない(戦後を書いた「昭和史2」にまとめている)ために、すこし不便を感じた。

 ちょっと疑問に思ったところがある。政治制度について簡単に触れるなかで、大隈重信が元老に加えられた(p12)とあるが、この記述は説明不足の感を否めない。元老は明治憲法による公式な制度ではなく、元老とはなにかという指標はいろいろ考えられる。大正以降の元老の指標の一つとして、後継首相の奏薦がある。確かに、大隈はその下問を受けたことがあるので(どの内閣か忘れてしまった)、元老であったという見方もありえるけれど、一般には元老に入れられないことが多いと思う。だから、その大隈を元老として言及するなら、理由付けが欲しい。
 
 いろんなことが起こった昭和戦前史を一冊の単行本で書くのは、紙幅の都合上、質も量も限られる。もっと書きたくともかけなかったこともあるだろう。大隈以外にも、もう少し説明してほしい箇所がいくつかあった。興味を持ったところは他の本で補いたい。