「知事の仕事-一票が地域と政治を変える」という選書
- 作者: 樺嶋秀吉
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2001/06/01
- メディア: 単行本
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著者によると、小選挙区制の導入によって知事の力が相対的に強まったという。公共事業を引っ張ってくることを力の源泉にしていた保守系国会議員の選挙区が狭まることで議員の影響力の行使範囲が狭まったこと、衆議院議員の当落にとって重要な小選挙区の区割りの線引きを決める審議会に都道府県知事が影響力を持ったことがその理由みたいである*1。
中選挙区より小選挙区の方が面積が狭いから議員一人の影響力行使範囲は当然狭まったが、地域全体の代表としての性格は小選挙区の方が強い気がする。つまり、中選挙区なら定数分の一票を取れれば当選確実だが、小選挙区は過半数取らないと当選確実でない。だから、中選挙区時代のように選挙区の部分を握っていれば当選できた時代でなくなった小選挙区制では、議員は選挙区全体の利益を目指すのが合理的だと思う。というのは、なんだかんだ言っても、有権者は地元利益に繋がる候補者の方を好むと思うからである。
中選挙区制なら外交とか国防スタンスで支持を集めて定数分の一のギリギリ当選を果たしていた議員A*2も、そんなことばかり訴えていても、有権者には地元利益の方が大事だから、過半数は取れない。このままだと落選してしまうので、この議員Aは選挙演説で「道路だ」「ハコモノだ」と大声で訴えるようになる。
だから、小選挙区制になって、確かに選挙区面積減少で公共事業に関わる絶対的機会は減ったが、その分議員の地元公共事業への関心が高まったとも考えられ、公共事業への議員の関わりは減っていない可能性があり、小選挙区制の導入で知事の力が相対的に高まったのかはやや疑問に思った。