「日本の地方政治 二元代表制政府の政策選択」
- 作者: 曽我謙悟,待鳥聡史
- 出版社/メーカー: 名古屋大学出版会
- 発売日: 2007/12/10
- メディア: 単行本
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それと、朝日とか日経?だったかでもこの本は取り上げられていた。朝日については小林良彰先生が書いたのがねっとにあったのでそちらを参照。
そういう周辺情報はここらで止めて、内容の話しに入りたい。二人の研究者の完全な共同執筆によって書かれたこの本は、戦後日本の地方政治で、知事と議会(二元代表)の党派性や党派構成といった政治変数が政策に影響を与えてきたことを示している。まず、比較政治学のアプローチ(比較政治制度論?)を使って理論モデルを検討し、日本の地方政治(都道府県レベル)を位置づけた上で多くの基本仮説や補正仮説を導いている。その上で、60年代から70年代前半を革新自治体隆盛期(4章)、70年代後半から80年代を保守回帰の政策変化(5章)、90年代からを無党派知事期の政策変化(6章)に分けている。4、5、6章では、それぞれの時代の特徴や背景の叙述をしたうえで、1章で検討された仮説を元に作業仮説を提示している。これらの作業仮説は、財政データをによって計量的に検討されたり、事例を使って検討されている。
小選挙区から選ばれる知事はマクロな集合財的な政策に関心を持ち、大選挙区中選挙区から選ばれる議員にはミクロな個別財的な政策に関心を持つという分析があったが、4章にあった革新政党の議席が多いほど土木費や商工費や農水費が高まるいうのは意外だった。革新=福祉で保守のバラマキ政策とは一線を画していたと思っていたので。
6章にあった民主党系知事の方が総花的な財政政策を行って歳出拡大傾向があるというのもやや意外だった。我が三重県の現知事も最初は民主党系の候補だったが、どれだけバラマキしてたんだろうか?調べてみたくなった。
理論的に仮説を導いて、その仮説を検証するという本書の研究スタイルはとても学問的だと思うし、小生もこういう研究をぜひやってみたい。
最後に、とにかく良い本だと思ったが、6章では6個しか作業仮説がないのに作業仮説7が出て来て少し戸惑った。まあ、ただの誤植(番号が一つずれてる)だったのだが。
*1:確か半袖の先生も