「投票行動」という名著

投票行動 (現代政治学叢書 5)

投票行動 (現代政治学叢書 5)

著者の三宅一郎先生は地位や名誉を求めずに研究一筋にすべての時間を捧げてきたにもかかわらず、研究者として最も名誉ある日本学士院会員になられた*1偉大な政治学者。この本は20年くらい前に出された本であるが、投票行動研究の基本文献といえるものである。
本の中では、投票方向を決める態度要因として、「候補者志向」「政党志向」「政策争点志向」の3点が挙げられている。
このうち「政党志向」では、革命によって生み出された社会亀裂構造(ex中央対地方、労働対資本)と政党システムが結びついているヨーロッパ的な社会学モデルと有権者が政党帰属意識(政党に対して宗教とか民族と同じような帰属感を持っている)を持ち、政党が準拠集団(その集団の規範に同調するならば、集団は準拠集団)として存在するアメリカ的な心理学モデルが挙げられている。
さらには、両モデルの日本への適用についても述べられている。

選挙データとかで、古さは感じたが、全体的にまとまりがよく、何度も何度も読み返したくなる本である。

*1:小林良彰「選挙・投票行動」あとがき