「議員行動の政治経済学」という本

議員行動の政治経済学―自民党支配の制度分析

議員行動の政治経済学―自民党支配の制度分析

中選挙区制という選挙ゲームのルールが自民党議員の行動にどういう効果を持っていたのかを実証的に分析した本。統計的なところとか消化不良な部分もあったが、合理的選択制度論の立場をとって、ゲーム理論から演繹的に導かれた作業仮説を検証するというスタイルが良いなと思った。
中選挙区制では、自民党から複数の候補者が出馬したため、個人投票の度合いが高まり、候補者間で票割りする必要があったという。すなわち、地域もしくは政策分野で票を割らなくてはならなかった。これらの票割りは、相手が戦略を変更しなければ、本人にも戦略変更の誘因がないということでナッシュ均衡であったという。
地域割りか政策割りかは各選挙区によるが、自民党議員の所属部会を分析すると、ふたつの票割りモデルには説明力があった。
自民党の政策は、地域割りのために自民党議員が地域集中的なサービスを行い、過剰な公共事業の支出へと繋がった。
さらに、政策割りのためにニッチな分野までカバーする自民党議員が存在し、野党の活躍できる分野が出来なかった。


叙述分析も良いが、理論研究で導いた作業仮説を検証するというのはやり方がはっきりしていておもしろいと再確認した。